ブレーメンの音楽隊

友人に米津玄師のアルバム『Bremen』を借りました。

とても素敵だったので、何曲か感想を書きました。

音楽を聴くのは好きだけど理論なんて分からないし、専門用語もないし、感覚的にダーっと書いた文章が続いているだけなので、本当に読みたい人だけ読んでください。

 

1.アンビリーバーズ

『今は信じない 残酷な結末なんて』

 

米津の曲、とにかく和音が解決しないイメージなんですが、「ここぞ!」というところで気持ちいいくらい開放的な進行をするんですよね。その「ここぞ」がこの曲では、サビの最初のフレーズに持って来られている。

歌詞を見れば、一番ではAメロからサビで夜明けが来る。二番では風が吹いている。

なんか希望に満ち溢れているんですけど……?

専門的な用語は分からないけど、パーカッションが民族音楽というか、始原的な、本能的な何かを呼び起こされるみたいなリズムじゃないですか。歌詞とあいまって身をゆだねられるような安心感がある。

あとはサビにてっぺんを持ってくるのがめちゃめちゃ上手い。

米津の曲には、クライマックスで伏線を全部さらっていくような爽快感があるよね。

アンビリーバーズを聴いて、改めて感じました。

 

 

2.Flowerwall

『誰も知らない見たことのないものならば今』

『僕らで名前をつけよう』

 

僕は音楽を聴くとき、ほとんど歌詞を気にしない。

それでもたまに「すげえ歌詞だ……」と思わず鳥肌立つことがある。

それがこの曲の一回目のサビの歌詞だった。米津の曲の歌詞はけっこう極端で、「陳腐だな、メロディに救われてるな」と思うか「こんな言い回しが存在するのか……」と感動するかがほとんどなんだけれど、完全に後者でした(ボキャ貧)。

米津の「主語が "僕ら" の曲」は、たいてい「万人が抱く、言い表せない複雑な感情」を歌っている(気がする)。

この曲は――説明するのは野暮かもしれないけれど――果たして幸福をもたらすものなのか、超えていくべきものなのか、得体の知れない"花の壁"にぶつかって『解らずに立ち竦んでいる』二人の曲。

俗っぽく咀嚼すると、友達とか恋人といる時に感じる幸せなような、不安なような感じ。このままで幸せなのに、ここから旅立たなければいけないような感覚。

米津、お前は、幸せを、幸せと、素直に受け入れられねーのか!!

結論としては、『運命』を『花の壁』に託すのが神がかっていました。

 

あと連符の使い方が上手いよね(『色とりど "り-の-は-な-で-で" きた』の6連符)。

聴かせたいここ一番の音を連符で置いてくるから、つい聴きいってしまう。

それも米津っぽさ。

 

 

3.ウィルオウィスプ

米津には珍しい曲。サビのメロディもだし、何より三拍子。このアルバムが『Bremen』ってだけあって、全員なんか知らんけど町を離れて高速道路っぽいところを歩いている。次の曲もみんな逃げ出してるね。

 

 

4.Undercover

『ラッキーなヒットでいいんだよ こんな苦しみを味わうより』

 

米津の真骨頂ですね。無茶な歌い方をしてる曲も結構あるけど、歌詞をメロディに乗っけるのがめちゃくちゃ上手い曲もいくつかある。これがそれ。あと『ドーナツホール』。

なんでかな、と思ったら、気づいちゃいました。

「っ」を使うタイミングがすごく良いです。小川を飛び越えるみたいな、スキップのリズムみたいな、とても小気味よい刻み方をしてくれる。体がメトロノームみたいに自然に揺れる。

ドーナツホールのサビも『失った 感情ばっか 数えて(い)たら』で「っ」の音がたくさん出てくる。「(い)」もリズムをとるための音ですし。

米津はこれがあるからやめられねぇな……。ってなった一曲でした。

このアルバムを聴いて一番の収穫だった。めちゃくちゃ好きです。ありがとう。

 

あと米津は野球用語を歌詞に練りこむのが好きだな!!

 

 

 

5.シンデレラグレイ

『(どの部分の歌詞もキツかった)』

 

メンヘラかよ。なにがあったんだ一体。

それはさておき、米津の曲って歌いづらいんですよね。まずリズムがむちゃくちゃ難しくて、それはたぶんこの曲のサビに代表される「細かい音符に詰め込んで、長い音で伸ばして」を繰り返すのを、米津が好んでいるからだと思うんだけども。

歌詞も不安定ならリズムも不安定。かと思いきやサビは結構ふつうだったり。

最後終わったかと思ったら終わってなかった。

嫌いじゃないけど、歌詞だけを見るとちょっとウゲってなった。

それで終わらせないのが米津ですけどね。

 

 

 

8.ホープランド

『ソングフォーユー 憶えている? 僕らは初めましてじゃない』

 

米津らしからぬ曲。けど、ある意味米津らしい曲。

まず『ウィルオウィスプ』もそうだけど、米津ってこんな三拍子の曲作ってたっけ?

あんまり記憶にありません。

三拍子というと、マーチというかワルツというか、一歩一歩踏みしめていくようなテンポになって、みんなが足並み揃えて歩くみたいな、童話らしさが増した。メロディもそれに合わせるように素直な展開が多かったと思う。

それはこのアルバムが『Bremen』だということを考えれば、成功だったのかな。

そういう意味では米津っぽくない。 

 

『いつでもここにおいでよね』という歌詞、とても暖かい。「よね」がいい。

幸せのなかにあるひょっとすると不幸せなもの、あるいは、どん底に思われる場所に差す光みたいな、そういうのを歌にするのが上手い。たまに突き放されたり、ひょっとすると救ってくれたりみたいな、和音と不協和音のバランスが心地よい。

そういう意味では米津っぽい。

 

 

Bremen』、米津の取っつきやすさと味わい深さが存分に出てたと思う。

トーシロが何いっとんじゃって感じだけど、要はこのアルバムには一発で聴いて「あ、こいつ好きだ」って思わせる即効性があって、加えて今まで米津を追いかけてきたファンも知らなかったような、新しい米津の一面を垣間見られる魅力がありました。

 

ただ米津、『お前ら5分後に別れんの??』みたいな曲多すぎます。